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訃報
その日は退社後まっすぐ帰宅した。
なんとなく父に申し訳ない気持ちから、駅前の和菓子やで、父の好物のいもようかんをお土産に買った。
「ただいま~」
リビングには母の姿しかなかった。
「あれっ?一人?」
私は父の姿を探した。
「明日までは居られる予定だったのに、急な仕事で帰っちゃったのよ…誕生日なのにね。」
ため息混じりの母の言葉に、今日が父の誕生日だった事を思い出した。
「だから単身赴任の先から帰ってたんだね。」
私は朝の会話を後悔していた。
「週末押し掛けよっか?」
私は母に問いかけた。
母はただ笑って私の持っているいもようかんの袋を見ていた。
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