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「………………」
ガタッ………
「!!」
じっと眼下の街を見下ろしていたら後ろから物音がして慌てて振り返った。
「あ…の………」
「あ………」
そこには昨日部屋の前で拾った青年が、戸惑いとも怯えとも思えるなんとも不安げな顔でこちらを見ていた。
「ああ。目、覚めたんだ?」
「……あの…俺…」
「ストップ。今から朝食用意するからさ、もうちょっと部屋で待っててくれるかな?」
「え…は、はい……」
極力怯えさせないように笑顔で優しく接してあげる。
不可抗力とはいえ、とりあえず拾った身としては事情を聞かないといけないので、相手に恐怖を与えたりパニックにさせるのはダメ。
これは長年ホストクラブという特殊な仕事で培ってきた僕の経験で学んだことの一つだ。
「さてと、つい口をついて出た言葉とはいえ、言っちゃったんだから作るか」
所詮は一人暮らしのしかも夜が仕事のホストの朝食。
いつもならもう少し遅い時間に外食で済ませる。
でも今日は違う。
腕まくりをして少し気合いを入れてから僕はピカピカのキッチンに立つと、久しぶりに自分以外の人間の為に朝食作りに取りかかった。
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