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実際サークルの他のメンバーが由莉と仲良くしたがっているかどうかは定かでないが、園田の言葉は少なからず由莉を笑顔にした。
「ありがとう。」
「次は絶対だよ!」
友人に呼ばれ、園田はそういいながら走り去った。
「青春ですね。」
「うっわ!!」
いきなり耳元でした声に、由莉は飛び上がる。
声の主、一條は満面の笑顔で手を差し出していた。
かっちり着こなしたスーツが学食の中で明らかに浮いている。
「そんな色気のない叫び声はいりませんから、原稿をください。」
「原稿?ああ、原稿ですか。原稿ね、原稿。」
あさっての方向を向いて呟く由莉に、一條は言い放つ。
「つまるところ、書き終わってないんですね?」
由莉はノートパソコンを抱えると、脱兎のごとく走った。
「あ、こらっ!!」
さすがに予想外だったためか、一息遅れて一條が追いかける。
由莉は女子トイレに駆け込んだ。
一條でさえもここには入ってこられない。
なんとか原稿を形にするための時間を稼がなくては。
個室の中で必死に考えを巡らせる。
恋は神様が…
神様……紙……トイレットペーパーの先を三角に折る……あの三角の意味ってなんだ?……見た目?使いやすさ?え?あれ使いやすくはないよね?
「だめだ!!」
思いの外気が散ることに気がついた由莉の視界に窓が映る。
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