第一章

16/29
前へ
/84ページ
次へ
「できたー!!」 勢いよく車のドアが開く。 由莉はパソコンごと一條に渡す。 「終わりました!!」 車から降りようとする由莉を、一條が押し戻す。 運転席に乗り込んだ一條に由莉が尋ねた。 「どうしたんですか?」 「店の名前は?」 「は?」 「店の名前を教えてください。車を飛ばせば今からでも間に合います。」 ハンドルを握る一條の横顔を、由莉は不思議そうに見つめた。 「一條さんって意外といい人ですか?」 「見た目通りのいい人ですよ。」 思わず吹き出した由莉の頬を、一條は思い切りつねる。 「いひゃい!いひゃい!」 じたばたもがく由莉を尻目に車が急停止する。 「少し遅れたけど問題ないでしょう。ほら、早く鞄持って。」 後部席にのせてあった鞄を渡され、由莉は車から降りる。 「あの……ありがとうございました。」 「こちらもエッセイを一本追加しましたし、その埋め合わせです。」
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

552人が本棚に入れています
本棚に追加