第一章

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「いや、全く知らない。知る由もないわ。知りたくもないわ。」 どこか棒読みな答えに、園田はますます不審そうな目で由樹を見た。 「俺は由莉の兄!顔見ればわかるだろ!」 噛み付くような由樹の口ぶりに、園田は苦笑する。 由莉は心底不愉快そうな表情で由樹に尋ねた。 「なんでいきてるの?」 「ちょっと待って!!1文字の違いでぐっとひどい台詞になってる!『なんできてるの?』だろ?そうだと言って!」 「黙れ無職が。なんでここにいるの?」 「あの陰険野郎に言われたんだよ!」 「一條さんに?」 「『大好きな妹さんなら今日は飲み会ですよ。もちろん男も同席するでしょうね。ご愁傷様です、シスコンお兄さん。』って言われて、黙って家にいられると思うか?」 「自宅警備員がなに言ってるの?」 とうとうたまらなくなったのか、園田はうずくまり肩を震わせ笑い出した。 由樹は憮然とした表情で園田を見下ろす。 「なに笑ってんだよ。」 笑いすぎて息も絶え絶えになりながら園田は答える。 「すいません。でも早川とお兄さんのやり取りが面白くて。」 「お兄さん言うな!この世で俺をお兄ちゃんと呼んでいいのは由莉だけなんだよ!」 「無職うるさい。」 「ちょっと由莉ちゃーん。今空気読む場面だったよね?お兄ちゃんの気持ち汲む場面だったよね?」 泣きそうな由樹に目もくれず、由莉は駅に向かって歩きだす。
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