552人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、全く知らない。知る由もないわ。知りたくもないわ。」
どこか棒読みな答えに、園田はますます不審そうな目で由樹を見た。
「俺は由莉の兄!顔見ればわかるだろ!」
噛み付くような由樹の口ぶりに、園田は苦笑する。
由莉は心底不愉快そうな表情で由樹に尋ねた。
「なんでいきてるの?」
「ちょっと待って!!1文字の違いでぐっとひどい台詞になってる!『なんできてるの?』だろ?そうだと言って!」
「黙れ無職が。なんでここにいるの?」
「あの陰険野郎に言われたんだよ!」
「一條さんに?」
「『大好きな妹さんなら今日は飲み会ですよ。もちろん男も同席するでしょうね。ご愁傷様です、シスコンお兄さん。』って言われて、黙って家にいられると思うか?」
「自宅警備員がなに言ってるの?」
とうとうたまらなくなったのか、園田はうずくまり肩を震わせ笑い出した。
由樹は憮然とした表情で園田を見下ろす。
「なに笑ってんだよ。」
笑いすぎて息も絶え絶えになりながら園田は答える。
「すいません。でも早川とお兄さんのやり取りが面白くて。」
「お兄さん言うな!この世で俺をお兄ちゃんと呼んでいいのは由莉だけなんだよ!」
「無職うるさい。」
「ちょっと由莉ちゃーん。今空気読む場面だったよね?お兄ちゃんの気持ち汲む場面だったよね?」
泣きそうな由樹に目もくれず、由莉は駅に向かって歩きだす。
最初のコメントを投稿しよう!