第一章

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「は~い、ストーップ。」 一條が逃げだそうとした由莉の腕を掴んだ。 「なんで逃げようとするんですか?」 「え?いや、ほら……ちょっとお手洗いに行きたいなー、なんて。」 「我慢してください。」 一條はこれ以上ないほど清々しい笑顔だ。 「そんなことより、今回の締め切りがいつだか分かってますよね?」 「ははははは……。」 「今回こそは守ってくださいよ?」 「努力するっていうか、善処するっていうか、心がけるっていうか……。」 あさっての方角に視線を泳がせる由莉に対し溜息をつき、一條は手を離した。 「今日だって『ネタが思いつかないから人間観察する』って言って呼び出されたっていうのに。」 「べつに呼び出してないです!なにしてるか聞かれたからそう答えたら、一條さんが勝手についてきたんじゃないですか。」 「だって締め切りをごまかすための手だって分かってますから。」
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