第一章

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もし、早乙女楪のファンが由莉のことを知ったらどう思うだろうか。 由莉は自嘲気味に笑う。 「恋人ができたことないのに、恋愛小説家だなんて。たしかに詐欺ですね。」 一條は隣を歩く由莉の呟きに、目をぱちくりさせた。 「気にしてるんですか?」 「多少は。」 「早乙女先生。」 一條は立ち止まり、由莉の肩に手を置く。 「は、はい?」 「そんなこと気にしないでいいですよ。先生は…… むしろ締め切りを気にしてください。」 満面の笑みで一條は言う。 そこは励ますところだろう、と心の中で毒づきながら、由莉は黙って歩きだした。 まだ一文字も原稿を書いてないなんて、一條にばれたら一大事だ。
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