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もし、早乙女楪のファンが由莉のことを知ったらどう思うだろうか。
由莉は自嘲気味に笑う。
「恋人ができたことないのに、恋愛小説家だなんて。たしかに詐欺ですね。」
一條は隣を歩く由莉の呟きに、目をぱちくりさせた。
「気にしてるんですか?」
「多少は。」
「早乙女先生。」
一條は立ち止まり、由莉の肩に手を置く。
「は、はい?」
「そんなこと気にしないでいいですよ。先生は……
むしろ締め切りを気にしてください。」
満面の笑みで一條は言う。
そこは励ますところだろう、と心の中で毒づきながら、由莉は黙って歩きだした。
まだ一文字も原稿を書いてないなんて、一條にばれたら一大事だ。
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