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「えーっと、19世紀イギリスにおける……締め切りまでに原稿あげられるかな……。」
壁にかかったカレンダーには一條がつけていった締め切りの大きな印が、これでもかというほど自己主張している。
だいたい一條は名前がやたら高貴なくせにえげつない。
あ、いいキャラクターが生まれそう……。
一條によく似たキャラクターを、頭の中で散々なめに合わせながらにやにやする由莉の部屋のドアが、控えめにノックされる。
由莉が無造作にドアを開けると、足元で兄の由樹が土下座していた。
無言でドアを閉める由莉。
由樹は慌ててドアに足を挟んだ。
「待って!せめてつっこんで!」
「黙れニートが。」
「うわー、胸に深く突き刺さるお言葉……。」
「ニートの兄の存在のほうが、我が家に深く突き刺さってるけどね。」
「あれ、なんでかな。俺泣きそう。ってか俺泣いてない?」
由莉は由樹の顔をまじまじと見た。
「なんかムカつくから泣かないで。」
「ツンデレですねわかります。」
「訂正する。なんかムカつく。」
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