目醒

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星が綺麗に見える丘の上。まさに絶景―静かな風が流れ、草木の揺らぐ音が響いている。 そこにいかにも村人といった軽装の若い男女がいた 「よし早速旅に出よっか」女は太陽のような明るい声で言葉を発する。 だが男は冷めた口調で女の言葉を否定する。 「まだ儀式を行っていないだろ。それにこんな軽装で旅に出るつもりか?」 女は不服そうな顔をしながらも、男の言葉が正論のようで反論出来ないようだ。 「そうじゃ。この島では、儀式を行ってから旅に出るのが、掟なんじゃ。」 突然2人の背後から米寿を越えていそうな老人が現れ、しゃがれた声で2人に告げる。 「長老!!なんでこんな所に!?」女は驚いた猫の様に跳ね上がった。 「ティーシェ落ち着きなさい。なに簡単な事じゃ、風が教えてくれたんじゃよ。」 「か…ぜ?」 女は長老の言葉の意味が理解出来ていないようだ。 「なるほど星の加護か。」男は女もといティーシェにも分かるよう長老の言葉に答えてみせた。 「長老も星の加護を受けているの?」ティーシェは驚いたような口調で長老に問う。 「人は皆、星の加護を受けているのじゃよ。魔法もその一つじゃ。」 「じゃあ魔法を使えるのは、お星様のお陰なんだね」ティーシェは男、もといゼンに明るい笑顔を向けながら話しかける。 「一般常識だ。」ゼンはそれを気にかける事なく、冷めた口調で返した。ティーシェはそれに対して少しムッとした表情をとる。 「さぁ、分かったら儀式に行っておいで。それからでも遅くはないじゃろう。」そして間もなく長老は穏やかな口調で2人を送り出した。
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