目醒

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丘から少し歩き、メートアの森を暫く進むとその洞窟はあった。 アイクル村の若者が村を出、一人前の星霊使いになる為の旅をする資格が有るのかを試される洞窟… 通称"星屑の祠"である。 「ここが儀式を行う星屑の祠だ。」ゼンは入り口で足を止め、静かに言った。 だがティーシェはゼンの言葉に気付いていないようで、独り言のように感嘆の声をあげている。 「森の中にこんな洞窟があったなんて知らなかったよ…。子どもの時よく森であそんでたんだけどなー」 「普段は不侵の結界が張られてるからな、ここまでは辿り着けないようになってたんだ。その証拠に今ここには儀式を行う俺たち2人しか居ない」 確かに周囲に人気はなく、ただ風の音や草木が擦れ合う音が妙に静けさを際立たせている。動物が居る気配すら無く、何者も居ない事がかえってこの場所の不気味さを醸し出していた。 だがそんな様子に臆する事なく、ゼンは悠々と洞窟の奥へと足を進めた。 「ちょ、ちょっとゼンっ。先々行かないでよ」 少し恐がっているのかその声は微かに震えていた。ティーシェは慌ててゼンの背中を追いかける。 そんな彼女の声を聞き、ゼンは振り返り無言で右手を差し出す。 ティーシェは少し涙目になりながらも、差し出された手をしっかり掴んだ。
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