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ゼンとティーシェが祠を進んでいる時、アイクル村では集会所に長老を囲む形で村人が集まっていた。
「あの2人は大丈夫か?」
「ゼンは兎も角ティーシェ嬢ちゃんは昔っからぬけてるとこがあるからな」
「儀式の間に行くまでに何も無ければいいが…」
小さい頃から2人を見てきた村人達は、心配からか落ち着きがなくざわついている。それというのも、過去に一度だけ儀式の最中に死者を出してしまった事があるのだ。村の史上で儀式で死者が出たのはそれが最初で最後(今のところは)だったため、それからは儀式の際は何が起きても直ぐに対処出来るように村の男たちは総出で集会所に集まるのだ。
「喝ッッ!!」
そのとき、重みのある大声が集会所に響き渡った。すると先までざわついていた部屋が一瞬で静まりかえった。
その声の主は村長の側近兼自警団隊長のベングルであった。
ベングルは身の丈が二メートルはある実に大柄な男で、鍛え抜かれたその肉体からは彼の過酷であっただろう過去や修行の日々が観て取れる。鋭い眼光と金色の髪、そこから繋がる髭、これが連想させるのは獅子であり、この表現はベングルを表すには実に的を得ていた。
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