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家につくと、薄暗い階段を登り僕はなんとか部屋にたどり着いた。
疲労は僕の心身ともに行き渡っており、僕はベットに倒れこんだ。
「ただいま」
「おかえり」
ベットの下からすぐ聞こえたおじさんの声は、何より僕を安心させた。
「僕、馬鹿みたいだ。」
「…そんなこと言うな」
「おじさんが行かないほうがいいって言ってくれたのに」
「行かなきゃわからないこともあるさ」
「行ってわかったのは、栗木さんが遠野を好きだってことだけだ」
僕は自分の愚かさから泣いてしまった。おじさんをひどく傷つけてしまって、このありさま。
「ぼうず、おいで」
僕は泣きじゃくったままベットからおりる。
ベット下の隙間の前に座り込んだ。
「ぼうず、隙間に手を入れてごらん。決してなかは見るなよ。手だけ、入れてごらん」
僕は言われた通り、手を入れてみた。
隙間はこころなしかひんやりしていてきもちいい。
その時、僕の手に何かが触れた。
「ぼうずの手はまだ小さな。大丈夫だ、俺が隙間にいるうちは、お前を守ってやるよ。今日のことだって、お前は悪くないさ。よく頑張った」
おじさんの手が、僕の手をとんとんと優しくたたいた。
それだけで、僕はまた泣いてしまう。
隙間からずっと守られていたことに気づかなかった。
隙間が、こんなに温かい気持ちで満たされていたなんて知らなかった。
「おじさん。嫌いとか、消えろとか、ひどいこと言ってごめん」
「いいんだ。隙間にいれば、どうってことないさ」
おじさんが笑ったのがわかった。
隙間はときに、僕らの間にすれ違いをもたらすのかもしれない。
だけどお互いが隙間に手を伸ばしたとき、僕らは隙間にはおさまらないぐらいの大切なものを手につかむことができる。
僕らは、そう信じてる。
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