スキマおじさん

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僕のベット下の隙間にはおじさんが住んでいる。 顔は、みたことがない。 多分のぞきこめば見れないことはないと思うのだけれど、見たら最後おじさんは隙間に戻ってこない気がする。 おじさんがいつからいたのかは、もう思い出せない。 僕はベットの下に隠すような本もないのでベットの下はなにもないはず。 そう思っていたら、いつのまにかおじさんがすんでいた。 「坊主、腹出して寝ると風邪引くぞ」 そして、僕が起きている時はベット下の隙間からは決してでてこないのに、なぜか僕のことをよく知っている。 「暑いんだよ、放っておいて」 そう言って寝たはずなのに、翌朝になると僕のお腹にはきちんと布団がかけられていた。 おじさんの仕業にちがいない。 僕はもう高校生になるのに、おじさんは過保護だ。そこまでするなら隙間からでてきたらいいのに。 あ、でもするとおじさんのアイデンティティがなくなるのか。 「おじさん、おはよう」 「おはよう。もう7時半だ。学校遅刻するぞ」 「本当だ。いいよね、おじさんは。隙間にいればいいんだから」 「それ以上言うと、おじさんは怒るぞ」 おじさんは僕が隙間を馬鹿にする発言をすると必ずと言っていいほど怒る。 けどそれ以外のことは、たいてい許してくれるけど。 「ごめんね。行ってきます」 「気を付けろよ」 おじさんは、今日も隙間から僕を見送った。 僕はおじさんのことを学校ではあまり話さない。 おじさんはああ見えて(見たことないけど)シャイな人だから、多分僕の友人がおじさんに興味を持ち家にきたら困るだろう。 特に高校からの友人の遠野なんか、クールな顔してやることが大胆だ。 僕の家に来たらおじさんがいるベット下の隙間に手を突っ込んでおじさんを引きずりだしてしまうにちがいない。 それはまずい。 「さ、桜井くん!今週の日曜、遊びに行かない?」 昼休み、そんな家には呼びたくない友人の遠野と話していたところ、僕の憧れの女の子、栗木さんに話しかけられてしまった。 しかも、遊びに誘われてる。 「やるじゃん、桜井」 眼鏡の遠野が無表情を崩さず(いっつもこんな奴だけど)、僕の耳元でひやかす。 栗木さんは勇気をだして僕を誘ってくれたのか、真っ赤な顔でうつむいていた。長い茶色の髪が、すとんと下に伸びている。 「うん、わかった」 僕は、そう返事をするので精一杯だった。
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