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「ヤクモ、お父さんだって」
「……」
「おじさん、間違えてましたよね」
「……」
「最近は若いお父さん多いからね……それで間違えたのかも」
「……」
「でもヤクモさん、まだ17歳ですよ?よっぽど老けて見えたのでしょうか」
「……」
「私は平均よりちょっと身長低めだしねー……それでヤクモの身長とかやけに高く見えたのかもしれないよね。実際、ヤクモは背高いし」
「……」
「まぁそれでも普通は、最悪三人兄弟とかに見られるはずなんですけどね」
「……」
「でも、私とセイタ君は兄弟見られたよね!」
「……」
「そこは間違えて欲しかったです」
「ヒドイ!」
間にヤクモを挟んで、セイタ君と話をしていると、話が進むたびにヤクモのチョコバナナを食べ進めるスピードが遅くなっているのに気づいた。最後にはセイタ君に渡そうとした仮面ライダーのお面を付けて、小さく聞こえるか聞こえないかの声でヤクモは呟いた。
「いい加減、オレの気持ちも考えてくれ……」
どうやら、本人も結構気にしていたようだ。慌ててセイタ君と二人でヤクモを励まし、スーパーボール掬いに行ってそこで少しだけ機嫌が良くなった。
全力でドラゴンボールのスーパーボールを掬おうとするヤクモの隣で、私は満面の笑みを浮かべながら、セイタ君に聞いてみた。
「楽しいね、セイタ君も楽しんでる?」
その質問にセイタ君も、満面の笑みで嬉しそうに返してくれた。
「はい、とても楽しいです!」
本当に楽しそうなセイタ君を見て、また来年これたらみんなで来ようと、そう決めた。
(幸せなんて、近くにあるじゃないか)
――屋台と、ボールと、家族と、
(そういえば、ヤクモはどうやってリンゴ飴を買ったの?)
(それは秘密)
(あ、僕も気になります)
(だから、ひみつ!)
(えーっ)
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