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「でも…一番辛かったのは、あの時のコップ一杯の水」
僕は呟いた…
連日の拷問で熱を出し
与えられたコップ一杯の水
それを目の前にいる男は取り上げ 「水が欲しいか」 と囁いた
コップの僅かな水は目の前で捨てられた…
「お願いします…と言ってごらん…」
熱で喉は渇き
やっとの思いで…声を出し 「お願いします」 と言う
彼は 水を渡す それから
牢の小さな窓を指さし こう問う
「あの塔が見えるか?」
?
塔の窓から ぶらさがってるのは・・人! 人間が数人吊るされてた
「死体だ・・見せしめだよ・・お前も 早く 問われた事と 忠誠を誓った方が身のためだ・・」
「ああ・・それから 3番目の吊るされてる死体 あれは お前の・・兄貴の一人だろう?」
僕はコップを落として そのまま昏倒した・・
「おい!この囚人はまだ 生かしておく 拷問は中止して 手当てしろ!」
抱きかかえられて
遠くなる意識の中で この男は言う
庭先で 籠の中のカナリアが鳴く
閉じた瞳を開けて 複雑な思いで 一年後の僕は
彼に言う
「兄は…とても大事な人でした…彼は抗わす…生きのびよ…と」
「少なくとも・・貴方のおかげで あれから 拷問を受けずに済んだことを 感謝すべきなのでしょうか?」
「ふん・・・お前は この籠のカナリアのように 素晴らしい楽器の演奏手だ・・・
それに 誰よりも美しい・・」
「きれいな黒い髪と海のような瞳が 人を魅了する・・」
「・・・そうだ・・妹は生きてるぞ!
妹は お前によく似てるというから・・会える日がくれば 楽しみだ」
彼は笑った
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