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一年前
反逆者の身内…として
一度は見せしめの処刑の危機にありながら
僕は生き延びた…
噴水のある
花が溢れた中庭…
カゴが置かれカナリアが鳴いていた…
息を深く吸い込み
ベンチに腰かけ
ゆっくりと楽器ウードを
つま弾いた…
※ウードはリュートやギターの原型
「いい音色だ…」
男が声をかける
演奏を続けながら
「今晩の主(あるじ)の為の宴の練習です」
僕自身でも…内心は驚くほどに
穏やかに答えられた
「私に対して憎しみも恐怖も感じられない
穏やかな目をしてるな…」
「そうですか…僕には分かりません…」
「久しぶりに会ったが…
私に対して 憎しみの情は消えたとは思えないが…
何か言たい事はないのか…」
僕は言葉を選びながら…
努めて 穏やかに答えた
「私は反逆者の身内ですから…本来なら処刑されてた・・
頼る者さえない身の上…」
「そのような者が親衛隊長様に何を申し上げてよいのやら…」
「以前は地下牢での捕囚・・・今は待遇は変わったが
捕囚には変わりはないか…」愉快そうに、喉の奥で笑う
「傷は癒えたか…?」
何も答えない僕に
もう一度問いかけた
演奏を止めて
僕は答えた…
「一年前に地下牢で
あなた方が僕に
ムチ打った時の傷…?
足裏につけた
小さな焼きゴテの火傷の後?
まだ少し残ってます…」
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