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桜蘭高校ホスト部。
暇をもて余した美少年大金持ちたちが同じく暇をもて余した女子生徒を持て成し、麗す部活。
ひょんなことから借金を背負い、女であることを隠してホストとして働く藤岡ハルヒは今日もお金持ちたちとの越えられない(越えたくもない)壁と奮闘していた。
「ハールヒッ!
なにをぶすっとしてるのかにゃ?」
「いやなんかまた非日常的な毎日が始まるかと思うと…」
環が外を眺めていたハルヒに後ろから声をかける。
ハルヒは気だるそうに環を見て言う。
環はそれを別段気にした様子もなくニコニコしている。
「どうでもいいが、小説にするにあたってちょっとした問題がある」
そこへ鏡夜がファイルになにかを書き込みながら歩いて来る。
ハルヒと環は、問題?と首を傾げる。
「光と馨の差別化だ」
鏡夜はしれっと言う。
「あ、そうか。
小説は文字だけですから口調ほぼ変わりませんもんね」
ハルヒがうんうんと頷く。
そこで環が不敵に笑い出す。
「ふっふっふ…それなら簡単だ。
この小説では光か馨の語尾に「~にょろ」を付けさせれば問題ないぞ!」
すごいだろ!と誇らしげに環が胸を張る。
「「そんなの嫌に決まってるだろっ!!」」
環の後ろから光と馨が飛び蹴りを喰らわせる。
「ぐはぁぁっ!?」
「別にそんな気味悪い語尾付けなくたって…」
『こうやってセリフの括弧を変えれば問題ないじゃーん』
「じゃ通常の括弧は光、『』は馨で問題ないか?」
横で悶絶する環を尻目に鏡夜が眼鏡を中指で押し上げて言う。
「「はーい!!」」
「ぐふっ…!
さ、さてそれでは記念すべき第1話だ!!
皆気合いを入れて…」
「まだハニー先輩とモリ先輩が来てませんよ」
双子の飛び蹴りのダメージから回復した環は素早く立ち上がって部長らしく振る舞おうとすると、ハルヒに横槍を入れられる。
「あれー?
そういや見てないね」
『いつもならもう来てる頃なのにね』
光と馨がケーキの積まれたテーブルをちらりと見る。
「はっ!?まさか!!誘拐っ!?」
それを聞いた環はすっとんきょうな推理をすっとぼけた声で言う。
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