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吉野拓海と出会ったのは、入試のときだった。部屋がわからずにキョロキョロしているわたしを、吉野拓海が見つけてくれた。
「迷ったのー?」
吉野拓海は受験前にトイレに行った帰りだったらしく、引っ込み思案で中々先生のいるところにいく勇気もなくて、困っていたところだった。
頷くと、吉野拓海はこどもみたいな笑みで「じゃあ探してあげるよ」と言ってくれた。
わたしは昔から男の子が苦手だった。小学校の時に、よく男の子からいじめを受けていた。今考えると、あれはよくある好意の裏返しだったのかもしれないけど、引っ込み思案だったわたしの幼心にそれはちょっと辛くて、男の子が苦手になるには十分な理由だった。
中学のときもなかなか仲良くなれなくて、克服できないまま卒業した。
話しかけてくれたり、色々親切にされたこともあるし、告白されたこともあったけど、なんだか怖い、っていう先入観が邪魔をして、わたしは結局前に進めなかった。
友達はそんなわたしを心配していたけど、わたしはこれでいいと思っていた。
美桜子は王子様とか待ってそうだよね、といわれたことがある。
確かにそうかも、と思った。わたしの男子へのイメージは、活発で元気がよくて、なんでもずかずか言えちゃう感じで、喧嘩ができて、力が強い。
風邪を滅多にひかない。とか、そんなものばっかりだった。
昔から運動がてんでだめ、身長もちっちゃくて、体を動かすのはあんまり好きじゃなかった。
けど、その反対で本は好きだった。本の中のヒーローはかっこよくて、ああ、コンナ人が現実にいればいいのに、とも思ったりした。
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