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デートというのにはちょっと雑な気がするけど、ゲームセンターで森と遊んでいた。
「わ、わわ、わ、」
うまくキャッチャーにひっかかったぬいぐるみが、取りぐちの近くへと運ばれていく。
そして、ガコンという独特の音がして手の届くところに落ちた。
「すごーい! 取れた!」
思わず拍手している合間に、森はかがんでぬいぐるみを取る。くたっとしたうさぎなんだか猫なんだかわからないふわふわのぬいぐるみだ。
森は「はい」と言ってわたしに手渡してくれる。
驚くことにクレーンゲームが得意な森。調子にのってぬいぐるみ三つもとってもらった。
「すごいね、こんなにたくさん! ありがとう!」
「……」
「わたし、基本的にクレーンゲームって一度もとれたことないんだよね。だからすっごいうらやましい」
顔が勝手に破綻して笑顔になる。
自分ができたわけじゃないのに、あまり見れるものじゃないだけにすごいテンションが上がる。
「出るぞ」
「あ、うん」
ニヤニヤとする顔を隠そうともせず森の後ろをついていく。
すると、すっと手を上から差し出される。
上からってことは手をつなごうと言うわけではないし、なんだろうと思っていると、無言のまま森がとってくれたぬいぐるみが入ったゲームセンターの大きな袋をするりと取っていった。
「あ、いいよ、とってもらったんだし。わたし持つから」
「そういうのってわがまま」
「はあ? なんでよ!」
「いいから持たれておけばいいっつってんだよ」
「意味わかんないんですけどー」
ぶーとわざとむくれると、
「なに、そんなに手繋ぎたかった?」
ニヤリ、と森が意地悪そうな顔で口角を上げた。
「なっ!」
関係なくない?! と思ったけど、そりゃ森がもう一つにもつを持てば両手がふさがるわけで、手がつなげないのだ。
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