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カー、と顔が熱くなるのがわかった。
「バッカじゃないの、そんなわけないでしょ!」
「ふ」
「わ、笑うな!」
バシッと森のことを叩くと、森は「いてーよ暴力女」と批難の声をあげた。
外に出ると、風がほおを撫でていく。さっき泣いたせいもあって、目がひんやりとしみる。
「あのさ」
「ん?」
「俺の見てないときに、あいつのことで泣くの、やめてほしいんだけど」
「ッ!」
思いっきり動揺して、鞄を取り落としそうになった。
なんで!? なんでバレてんの!?
言葉を失っていると、まるで見透かしたようにな目で森が見る。
「目、赤いのバレバレ」
ぱっと顔を俯ける。
なんでこんな鋭いかなあ。この人。
「そ、んなの。わたしの勝手だと思う」
「勝手じゃねーよ。べつの男のことで俺の知らないときに泣かれるこっちの身にもなってほしいんですけど」
トゲのあるいい方。
ちらりと森を見ると、少しむっとして前を見て歩いていた。
ふと、かわいいなぁ、こういうところ、と思ったら、はは、と笑っていた。
するとギロッと睨まれる。
「こわー。そんな睨まないでよ」
「誰のせいだと思って、」
はっと、森が遠くを見る。
なんだろう、と思って顔を向けようとすると、ぐいっと手を掴まれてそのまま引かれていく。
「わわ、ちょ。なにっ?」
「……」
黙ったまま腕を引かれる。
「ちょっと、痛いんだけど……っ」
ぱっと、森の手が離れる。
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