10コクハク

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 星野のもとを飛び出して、途中で立ち止まった。  そういえば、竹中がどこに住んでいるのか知らないことに気付いたのだ。  足元にビタビタした沼のような水が浸水してくるような感覚。  俺は、何やってんだろう。  本気でそう思った。  思い返せば、たぶん星野が俺のことを好きだっていう前から、多分竹中が特別だった。  目をつぶる。森の隣でいつものように光る竹中が浮かぶ。  ダメだ。こんなことしている場合じゃない。俺はブレザーを脱ぎ、鞄に押し込むようにして突っ込んで、スクバをリュックみたいにして背負った。  家がわかんねーなら、森と遊びに行ったことを考えて……いや、あの森が遊びにいったりとかすんのか? つかそれって、やっぱ付き合ってんのか?  かぶりを振って走り出す。  それでも俺は言おうと思った。  星野をあんだけ泣かせといて、やっぱやめたなんてこと絶対できない。  この近くで遊べる場所なんて限られてる。俺は学生が遊びにいくような場所にダッシュで向かった。  地元なんてものは、基本的にマックとゲーセンとカラオケがあれば学生は満足する。  でも、都心でもないのにそんなものが複数あるわけじゃないから、放課後学生が遊びに行くところって言うのは大体決まっているものだ。  街を走り、人の出入りが多い駅近くへ向かう。  周りが向ける奇異の目は、気にしないことにした。 「あれ? 吉野じゃん」  男の声だったからぜったい竹中じゃないけど、知り合いがいたのは助かった。 「さ。崎下!」 「お前今日彼女と、」 「森と竹中見なかった?!」 「は? 見てないけど」 「わかった!」 「え、ちょ、おい!」  再び走る。前病院に走ったときのように目的地があるわけじゃないから、ランニングくらいのペースで周りに気を配って走る。
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