99人が本棚に入れています
本棚に追加
マックは行った。イートインに二人は居なかった。
森がカラオケなんていくわけないから、カラオケは除外してゲーセンに向かう。
訝しげな視線を無視してキョロキョロしていると、クラスメイトの女達がプリクラ機の前できゃっきゃと騒いでいた。
「あれ? 吉野だぁ。どしたん? 汗だくじゃん」
「竹中と、森見なかった?」
「え? 花たちならさっき出て行ったよー。なんかすっごい楽しそうだったから話しかけてないけど」
「ねー。なんかすっごいはしゃいでたよね、花」
「わかった、サンキュ」
花がはしゃいでたね。そんなことあんのかよ。
あーくそっ。わかってたことだけど結構キツイ!
ダッシュでゲーセンを出て再び走る。
次は無難に服やとか行く? いやでも森が女物の服やについていくとは思えないし竹中もそんなものに着き合わせたりするんだろうか。
まぁいっか。と思って走って、曲がり角が現れ、学生が入りそうな店の前に通るたびに一つずつ目を凝らしていると、
「あっ」
いた。竹中と、森だ。
「たけな……――」
か。名前を呼びきる前に、足が止まった。
森が上半身を傾けて、わずかに顔をもたげている。
なんで、よりにもよって。
このタイミングなんだよ、俺。
目を逸らそうにも逸らせなかった。森はすんでのところで止まって、竹中の額に唇をつける。心底から、いらだちが込みあがってくる。
触るなよ。
おまえが。
なんて、俺が思うなんて、笑えるけど。
真っ赤な竹中が、森に何かを言って、そして森が余裕気にそれに対応する。
「か、からかったの!?」
竹中が、ムキになったときの声。
「バ、バカ!」
少し離れたところから聞いて、あいつの声ってあんなうるさかったんだ、と思った。
何をいわれたのか、竹中がバシッと森を叩く。
最初のコメントを投稿しよう!