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なんか。色々バスの中で考えていたけど。
「わたしのほうが絶対吉野のこと好きだから」
言うことなんて、一つだけだ。
「は……?」
「それだけ。じゃあね」
くるっと方向転換すると、吉野が慌ててサンダルを突っかけなおしたのか、ずるずるという音がした。
「ちょ、ちょっと待った!」
手首を掴まれる。たったそれだけのことで、触れた先から熱くなっていく。
「なにそれ。よくわかんないんだけど。え?」
パニックになっている吉野を振り返って、睨みつけるように見上げる。
「だ、だから! わたしはあんたに彼女ができた時点でもうすきだって、思ってたし、たぶんその前から好きだったし、あんなにいい人なのに、森のこと、好きになれないくらい好きで……どうしようもないくらい、ホント、バカみたい」
続きはいえなかった。
次に言葉を発したら、絶対泣いちゃうと思った。
こんなに泣く人だったっけ。わたし。涙腺壊れてる。すぐ泣くのって嫌いなのに。
「うわ、まじかよ」
すとん、と吉野がしゃがみこむ。
「……」
「やばい」
「なにが」
「やばいってこれ。ほんと、やばい」
「だからなにが!」
恥ずかしさを誤魔化すために大きな声を出すと、吉野がすくっと立ち上がって、くはっと笑った。
太陽みたいな、バカっぽくて何も考えてないような、サルの笑顔。
「な、なんで笑うの!?」
「いや。竹中だーと思って」
「はあ?」
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