11トドク

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「あのさ、」  吉野が口を拭くような姿勢で隠しながら、目線を逸らす。 「な、なに?」 「さわってもいい?」 「え……っ」 「すっげー、ぎゅってしたい」 「!」  カッ、と顔が一気に熱くなる。森のときに赤くなってたのはなんだったんだってくらい、顔から火が出る思いだった。 「い、い……け、ど」  一文字ずつ言うのがやっとだった。  恥ずかしすぎて目線を逸らす。  でも、次の瞬間には吉野の腕がわたしの背中に回っていて、まるでぬいぐるみを抱きしめるような感じに、抱きしめるっていうそれっぽい表現なんか全然似合わない。  久しぶりにあった外国人同士がするようなハグだった。 「あー、もうすげー嬉しい」  耳に近い位置で、吉野が試合に勝ったときのような声を出す。きゅうっと、胸のあたりが  少し湿ったワイシャツ。どんだけ全力で走ったんだよ。おかげで家まで来ちゃったっつーの。  泣きそうだった。こらえるのに苦労した。恐る恐る吉野の背中に手を回すと、さらにぎゅうっとされた。  うわあ。今、わたし、吉野に抱きしめられてる。  吉野が、手の届くところにいる。  吉野が、わたしを見ている。  
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