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三度目に吉野拓海と会ったのは、入学式の帰りだった。
「あ、迷子ちゃん!」
そういわれて振り返ると、にっこり笑って、横に三人くらい引き連れた吉野拓海だった。
「あ、えっと……」
「吉野拓海っていうんだ、俺。なんかよく会うね?」
「う、うん」
「もはや運命?」
そう言って笑うと、八重歯がのぞいた。かわいい、と思った。
同時に、運命なんてベタなセリフにちょっとどきっとした。隣の男子が「ばかか。田舎だからな」と言った。
「名前なんつーの?」
「ほ、星野、美桜子」
「へー、きれいな名前だね! 星野か。よろしく、星野」
太陽みたいな笑顔で、吉野くんはわたしに手を出してきた。わたしはおそるおそるそれを小さく握って、
「よ、よろしく」
と言って握手をした。
まだ中学生っぽい、こどもみたいな人なのに、手が思ったよりも大きくてしっかりしていて、どきっとした。
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