99人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちっちゃいね、きみ。俺、」
隣の男がわたしの頭を触りながら言った。どき、とこわさに身が竦む。すると、
「美桜子、おまたせ!」
由紀がいいタイミングでやってきた。
「あ、きみこないだの!」
吉野くんが声を上げた。
「どうも。美桜子、行こう」
態度のよくない由紀に、吉野くんの友達が微妙な顔をしたけど、吉野くんは特に気にした様子もなく、「じゃあねー」と言って手を振った。わたしが控えめに手を振り返すと、また笑った。
ほっこりとあったかい気持ちに思わず口元が緩む。
「めずらしいね、美桜子が男子を怖がらないの」
由紀がわたしの顔を覗き込んでいった。
「あ、うん。なんか、吉野くんは、平気」
つたない言葉で途切れ途切れに言うと、由紀はははーんと言ってつん、とわたしの頬をつついた。
「惚れた?」
瞬間、ぼっと顔が熱くなるのがわかった。
「ほほ、ほれ……!」
すると由紀は「やっとか。王子様?」と言って笑った。からかわれたのだと思って、由紀の肩をこづく。
「か、からかわないでよ」
「ごめんごめん。でも、応援するよ。よかったね」
ふわりと、心があったかくなった。
「あ、ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!