99人が本棚に入れています
本棚に追加
吉野くんはわたしの隣のクラスだった。
移動教室のとき、昼休みのとき、たまに会ったら挨拶してくれて、わたしはそれに答えながら、段々どきどきするようになった。
朝鏡をみながら、ちょっと髪型に変化をつけたり、吉野くん気付いてくれるかな、と思ったり、移動教室のときはこっそり吉野くんを探したり。
由紀はそんなわたしを見て「恋だねぇ」とコメントした。
それからちょっと経って、吉野くんといつも仲のいい女の子がいることがわかった。
「ちょっと吉野! あんたまた!」
「だっておまえんとこのうまいんだもん」
「だもんじゃない!」
「なんだよー、これからサッカー行くんだから離せよー」
「はなせよーってあんたねぇ。毎日毎日迷惑してんのよ、こっちだって!」
「はは、その辺にしとけよ、竹中」
廊下を見ると、女の子が吉野くんの腕を掴んで怒鳴っていた。
その様子を、吉野くんの周りの人が呆れたように見ていた。
「美桜子、気になるの?」
由紀が言った。わたしは慌てて取り繕ってそんなことないよ、と言った。『たけなかさん』は、吉野くんのことが好きなんじゃないかと、時々思う。
あんなふうに気兼ねなく、なんの緊張もしないで吉野くんと話せるたけなかさんが、うらやましかった。
最初のコメントを投稿しよう!