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わたしは笑った。頑張って笑った。
「ありがとう、星野」
抜け殻だった吉野くんに、熱が入った。
よかった。わたしの好きな吉野くんだ。そう思った。でも、それと同時にわたしの横をすり抜けて、かばんをひっつかんで走っていた。
熱が入った先はわたしのいないところだ。わたしはぼんやりと思った。最初から、わたしは叶わないことを知っていた。
だって、竹中さんを好きな吉野くんのことを、好きになったんだから。
なんて。最低の気分。
痛い。
くるしいよ。
「美桜子……?」
由紀の不思議そうな声がした。
振り返ると、由紀が心配そうにわたしを見ている。
ぐにゃりと視界が歪んで、自分の顔も歪んだのがわかった。
「ゆ、ゆきぃ……う、うぅ……」
嗚咽がこぼれた。
さっきが大決壊だと思ったのに、さっきよりも大量に涙が出た。
由紀が慌てて鞄を放り投げるようにしてわたしのところへ走ってくる。
「どうしたの? なにがあったの?」
説明しようとしたのに、言葉にならない。
うえ、ええ、と変な声が出た。喉がやけるように熱い。肺が悲鳴をあげるくらい嗚咽が止まらない。
言った先から後悔している。気持ちよく好きな人の背中を押すことだってできやしないのか。
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