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彼は何の前触れもなく私の部屋を訪れるし、何ヶ月も会わないなんてこともざらだ。
おそらくとても自由な人だから、私とのこの曖昧な関係など彼にとっては一瞬の出来事で、何かを問いただしたら終わり。
いつにも増してそう感じた夏の夕暮れの私の部屋。
閉じていないブラインドから、オレンジ色の透明な色彩が私のワンルームを照らす。
クーラーなど点けていないので、熱気がこもっている。
ぎゅうと彼のむきだしの背中に手を両手を回してみると、汗で湿っていた。
私も汗にまみれてみっともない。覆いかぶさる彼にははっと笑うと、彼もきれいな切れ長の瞳でははっと笑った。
夕日の中でその目は驚くほど澄み渡り、黒と夕日の光線が綺麗にまじった色を見せる。
ああ、綺麗。
暑さと、彼の肌の熱さと、今までの行為の余韻でぼうとしながら彼の背中に回した右手をひたりと彼の左頬に当てた。
そうして彼は猫がのどを鳴らすように手にすりすりする。
たまにしか帰ってこない大きな猫を飼っていることにすれば、傷つかないのだろうか。
そう、思った。
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