【ワカナ】

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「どうしてそんなに生きづらそうなの?」 背を曲げて、顔を覗き込むようにして 目を合わせてきた彼 「生きづらそ?」 「うん、つらそう」 一瞬 何を言われたのかわからなかった そんなことよりも、子どもみたいな彼の目に吸い込まれそうだった 「俺が、ハッピーに、してあげるよ!!」 無邪気な笑顔で放ったそのフレーズが、 なんだかとてもかわいくて わたしは肩の力が一気に抜けてしまったのを覚えてる 「あなたが、わたしを、幸せに?」 「うん、俺が、キミを、ハッピーに」 わたしがそこでやっと顔を上げると、あなたも背を伸ばし、 自分の髪をくしゃくしゃと掻いた。 「ありがとう」 あの日からわたしの世界には色が溢れ、音が生まれ、 木や水滴、すべての呼吸が聞こえるようだったよ。 あなたはそれくらい生き生きした世界にしてくれたよ 寒い12月。 お墓の前で手を合わせる 「あなたと過ごした時間は、とっても、ハッピーだったよ。」 もう泣かない あなたがくれた幸せを抱えて 無邪気な笑顔を思い出す 空から見てる? 今はとても生きやすい世界 あなたがしてくれたんだよ
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