一本場『滞る風』

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「……夢か」 湿っぽい夏前特有の暑さで目が覚めた。 今、高校二年生だから、あれからもう一年半以上になるのか。 ということは、もう一年半以上走ってないんだな……。 俺が分かり易く落ち込んでいると誰かから声をかけられた。 「あ、おはよー、のんちゃん。丁度今、終礼終わったよー」 声の正体は、橘 美希(タチバナ ミキ)であった。 家が隣同士なので小さい頃から親睦があり、あまり女子と縁がない俺が仲良くしている数少ない女の子である。 「そうか。じゃ、一緒に帰るか。……と言いたいがお前、部活だったな」 「……うん。ごめんね?」 「いや、気にすんな。じゃあまた明日な」 部活があるらしい美希に背を向けて帰ろうとカバンを担ぐ。 はてさて帰りに焼き鳥でも買って帰ろうか、などと考えていた時である。 「の、のんちゃんっ! ち、ちょっと待ったぁ!」 突然に背後から待ったを受けた。 言わずもがな、声の主は美希である。素晴らしい声量だ。
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