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待ったをかけた美希に向き直ると自分の大声が少々恥ずかしかったらしく、頬に朱が注していた。
「あの、ね。非常に頼みにくいんだけどね。そのね」
いつも物怖じせずに、というか空気を読まずにズバズバ発言する彼女にしては珍しく口ごもっていた。
「勿体ぶるなんてらしくないな。俺とお前の仲だし、別に何でも言っていいぞ?」
「えっと、その、お願いがあるんだけど……」
「無理のない範囲で頼む」
「ちょっと無理あるかもなんだけど……」
やはり言いにくそうにもじもじとしながらこちらをチラチラと見ている美希。
「なら、ちょっとなら無理も聞くが」
「う。……実はウチの部活の団体戦に出て欲しいの」
「はい?」
「その、ウチの部活動の団体戦のメンバーになって欲しいの!」
部活というのは、日々の練習の中で他の部員達と切磋琢磨しながら成長していくものだと中学の頃に学んだ。
つまり、今まで練習も何もしてない奴が団体戦のメンバーになるなんて有り得ない筈だ。
ただ一つ、例外を除いてな。
「まさか、部員不足!?」
「うー……お恥ずかしい限りで……」
「まぁ、そういうことなら協力してもいいぞ」
部員不足の場合しか有り得ないからな、そんな要望。
しかも、俺も中学の頃、部員不足でリレーに出ることが出来なかったことがあったので、部員が足りなくて挑戦できない悔しさは知っているつもりだ。
「本当に!? ありがとうのんちゃん! きっと皆喜ぶよ!」
顔を綻ばせて喜ぶ美希。
その様子につられて笑ってしまう俺だが、しかしコイツ、何部だったっけ?
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