Chapter1.なんでもないアイツ

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この強い風のせいで、校門まで道のりに咲く桜の花びらが見事に吹雪いて、時々私の体をさらさらと撫でる。 こんなに吹雪いていると明日には桜の木もさっぱりしてしまうのかと思うと虚しい。 それにしても春の朝はほんとに長閑だと思う。 今日はたまたまいつもより早く起きることが出来たので、こうしてのんびりと駅から学校までの道を歩いているところなのだ。 春の空気を感じようと息を深く吸ったところで、私のスクバがグイっと後ろにもっていかれて重心が後ろに傾きゆらりとバランスを崩しかけ、驚きとタイミングのせいもあって加えて私は大きく咽せた。 「あらあら大丈夫維澄ちゃん?」 私は涙目になった目でギロリと声の主を睨んだ。 ほんとに、せっかくの"良い"朝が台無しだ。 「あんたのせいでしょ?私の素敵な朝を邪魔してくれてどうもありがとう」 「それはすいませんでしたねー。相変わらず可愛くねーオンナ」 「お願い、黙って」 「……つーか今日って朝単語テスト?」 黙ってと言ったそばから話し始めるこいつの顔は幼稚園の時から知っている。 隣の隣に住んでいて、いわば幼なじみというヤツ。頭のレベルも大差がなかったため高校まで一緒になってしまったという悲劇だった。 「そうだよ。私はもう電車の中で勉強してきたけどねー」 「はぁ?てめーいつからそんなガリ勉なったんだよ」 「いや、別にガリ勉ってほどじゃないでしょ、フツーのことでしょ。まぁあんたにはフツーの事じゃないかー」 「うぜー」
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