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最悪な対面
(3)
兵堂は表情を変えず、眼鏡の女性の後ろを歩いている。
陽代はその後を追うのだが、どうも慣れない場所の為か、目を白黒させながらついていく。
中央の階段を上り、右へ曲がり、長い廊下を歩く。
(スゴイ、コレって確か、ペルシャ絨毯じゃない?高そうな模様だし…壁にも大きい油絵やら飾ってあるし)
余りにもキョロキョロしていた為、端に置いてあった壺にぶつかり、転んでしまう。
「すみませんっ、腕がぶつかってしまって」
謝りつつ、絨毯の床に落ちた壺を両手で戻そうとするが、結構重い。
「大丈夫ですか?」
後からついてきていた木嶋執事は、おやおやと壺を見て、大事そうにポケットからハンカチをとり、そうっともとに戻す。
「傷はないようですね、この壺は大旦那様が大事にしている代物でして。確か、5千万で購入したと聞いております」
陽代の頭の中は、その瞬間真っ白になる。固まってしまった新人メイドに、優しく笑みを作る老執事。
「大丈夫ですよ、無事です」
(良かったぁ…借金が増えるのだけは勘弁してほしい…)
胸をなでおろす陽代へ、まあまあと穏やかに口を開く。
「坊ちゃまのヒステリーに比べたらば、あなたは理由がきちんとありますので、壊したとしてもお許しを頂けますよ」
はぁと返すが、ソレはどういう意味でしょう?と心の中で呟いてしまう。
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