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クラクラする目を懸命にもとに戻して、何が起きたのか理解しようとする。
(いったい何が…?)
「香山。僕の機嫌が悪いのを知っていて、よく部屋に入ってこられたな」
冷ややかな声が聞こえてくる。呼ばれたメイド長は、申し訳ございませんと頭をさげた。
「しかし」
「しかし、もない。ここから去れ、今すぐにだ」
苛立ちを隠さずに言い切る部屋の主。困惑顔の彼女へ、老執事が何かをささやき、彼女は軽く頭をさげて廊下へ出る。
「坊っちゃま。ご機嫌斜めはわかりますが、私のお話を聞いてください」
「嫌だ」
即座に断言する主に、彼は眉をひそめ、大きくため息をつく。
「子供じみたことをおっしゃるのは、お止めください。七々木家を継ぐ嫡男として、ふさわしい態度をお見せください」
「誰も継ぐとは言っていないっ!!」
声をあらげて叫ぶ相手へ、老執事は一瞬寂しげな表情をみせるが、唇を一文字に結び、静かに言う。
「仕方ありません、今日からあなた様につく女性の紹介でしたが……明日にしましょう」
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