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対峙している主人と執事を見て、陽代は隣の兵堂にささやく。
「あのぅ…坊っちゃまと呼ばれている人が、ここの主人なんですか?」
背が高く、細身の体型。髪は、くせのないさらりとした黒。瞳は焦げ茶で中性的な顔立ち。まあ、いわゆるイケメン。
兵堂は苦笑いを浮かべつつ、頷く。
「お父上の、七々木圭斗(ナナキケイト)様が後継者になる予定でしたが、事情があり、ご子息の旺司様が継がれたかたちです」
(イロイロ複雑なんだ、お金持ちの家庭は)
そう思っていると、あまり好意的なものではないとわかる程の、厳しい視線を感じる。
「このチビ娘が新しいメイドか?」
突然に座っていた椅子から腰を上げ、腕組みをしながら陽代へ近づく。
気まぐれな主人に対し、動じることなく老執事はハイ、と答える。
下から上までジロジロと眺め、ふうんと声を出した。
「おい木嶋。誰が中学生を雇えと言った」
「ちょっ…!」
陽代は目を大きく開き、抗議をするが完全無視。若き当主は執事の方へ歩く。「坊っちゃま、失礼ですよ。前瀬様はあなた様と同じ年です」
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