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部屋から出た途端、たまっていたものが爆発してしまう。無意識に強く壁を叩いてしまい、あわてて横の木嶋執事に謝る。
「すみませんっ、つい…」
「いいんです。それよりも額の方はどうですか?傷はついていませんか」
心配気な執事へ「大丈夫です」と答える。
そうですか、と安堵したように言い、実はですねと陽代の顔を見た。
「先ほどの行動は、坊っちゃまの嫌がらせ第一弾です」
「第一弾…?」
「他の方にも同じような事をなさいます。皆様、大半がそれが原因で辞めるのです」
(そういえば、ひどい事を言われて限界だって辞めた人もいるって…)
陽代はまさかなぁ、との考えで執事へ問う。
「第一があるって事は…第二、第三もある…のでしょうか?」
一瞬の無言の時間があり、彼は申し訳ありませんと低い声で答える。
「大変心苦しいのですが、どうか私に免じて許して頂ければ」
深々と頭を下げられ、陽代は大丈夫ですからっ!と老執事に言い切る。
「…まあ、事情がありますので、簡単には辞めないです。木嶋さんの心配は無用です」
執事は安心したように、良かったですと微笑む。
そんな彼に、陽代はひきつった笑みを浮かべる。
(普通だったら即逃げるな、私…)
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