最悪な対面

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木嶋執事は「後で額の手当てをしましょう」と言い残し、ここで失礼致しますと2人の前を去る。 少し距離を置いて立っていた兵堂が、陽代の側により、口を開く。 「頑張れますか?あの主人のもとで」 「だって借金持ちの身ですし……帰れる場所もないですし…あきらめています」 ブツブツと言う彼女へ、その調子ですとにっこりする。 「その気持ちがあれば、耐えられますね」 兵堂はそれでは、と言い残して階段を下り、玄関へ向かう。メイド達が、お辞儀をして彼を送る。 1人ポツン、とたたずむ陽代。ゆっくりと廊下を歩き、改めて屋敷の大きさを感じる。 (本当に私、やっていけるかなーこんなところで) 「大丈夫だ私、いちいち考えてたらキリがない。ガンバロー、オー!」 小さく拳を上に上げて、決意を表面した。廊下をズンズン進む。 そんな陽代を黙って見つめていた人物がいる。扉を細く開け、彼―七々木旺司は微かに整っている眉を寄せる。 「今までのと同じように、追い出すのみだ」 冷ややかに笑い、バタンと扉を閉めた。ん?と振り返る陽代は、気のせいかと首をひねり、足早に階段へ向かう。
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