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頑張ってね、と彼女は急いで着替えて部屋を出た陽代へ、軽く手を振る。
「申し訳ありません、遅れました」
息を整わせてから香山メイド長を見る。飛び込んできたのは、ゴールドの派手なフレーム眼鏡。キラキラと明かりに反射している。思わず凝視してしまう。
彼女は気にもせず、「こちらです」と早足で歩いていく。
屋敷には地下もあり、狭い階段を下っていくと、左側が大きな倉庫室。右側がどうやらメイド達が集まり、勉強する部屋らしい。
長テーブルが真ん中に置かれていて、椅子も揃っている。奥側に、巨大な液晶テレビがどんと存在感をみせている。
(本格的な会議室みたい…あのテレビのサイズってよく電器店にあるやつ、だよねぇ)
まじまじとテレビを眺める陽代へ、香山メイド長はフレームを動かし、持っていた分厚い書類の束を、テーブルの上へと置く。
びくっと身体を震わす新人へと、軽く鼻を鳴らし、自分はテレビに近い席に座る。
「席に座って下さい。…この束に、目を通していって下さい」
ばさり、とテーブルに白い紙が並ぶ。文字がぎっしりと印刷されており、陽代は目がチカチカする。
「では、1枚目から始めます」
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