日常が壊れる日

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[1] いつも通りに適当に起床し、ふわあと大きいあくびをしつつ、テレビをつける。 昨日、買い置きしていた半額シール付きのイチゴジャムパンを電子レンジで軽く温め、やかんでお湯を沸かす。 パジャマ姿で朝食をとり、郵便ポストに入っていた無料ペーパー雑誌をめくる。 「ここいいかも…でも高いなあ」 独り言を呟き、インスタントコーヒーの粉を入れたカップにお湯を注ぐ。熱いのでさましながら口に入れる。 そんな日常を送る自分-前瀬陽代(マエセ ヒヨ)、21才。現在、某コンビニのアルバイトを週4回こなす。 「ああ…今日はワーストだ。ヤバイな」 毎日チェックしている朝のテレビ占いを見て、肩をすくめる。(今日って確か、店長と一緒だ。いちいちケチつけるからなあ、あのヒト) バイトがある日は、時間までこうやってのんびり過ごし、近くの仕事場に自転車で通勤する。 1日フリーの時には、朝方4時頃までテレビや借りてきたDVDを見て、ベッドに入り、夕方まで眠る。こんな暮らしを数年間続けてきた。 「昨日はちょっとテレビ見すぎたかも~目が痛いや」 自転車のペダルをこぎつつ、目をこする。 「おはようございます」 こう言いながら、店の裏口から出勤。タイムカードを押し、ロッカールーム兼休憩室へ移動し、制服に着替えて店内へ。 「おはよう、今 日もずいぶんとギリギリの出だね」 「…すみません」 店長のイヤミな声を聞き流し、いらっしゃいませと客が入ってくるたびに叫ぶ。 (今日は雑誌も入荷が少ないし、楽かも) 昼頃になると、近くの会社から事務の女性や営業の人達がくる為、レジも混雑する。 1人1人さばいていると、唐突に「前瀬さん?」と名を呼ばれる。 声の方向に顔を向けると、2人の見知らぬ男性がこちらを見ていた。 首を傾げながら、レジに並ぶ人達をさばくのに必死で、視線を感じつつも手を動かしていた。彼らは黙って隅で待っている。 店長が誰?、と聞いてくるが、さあ、と言い、レジ袋に物を詰める。 人の波も収まったところで、彼らが近づいてくる。 「あのう…あなた方は?」 1人の男性が、名刺を出す。 「ご両親が私共に借りているお金についてのお話です」
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