日常が壊れる日

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「とにかくさ、こういうのは困るんだよ、あまり酷いとバイトもクビだからね」 長い説教を延々とただ頭を垂れて、黙って聞く。 「ご迷惑おかけしました」と最後に深く頭を下げて、ようやく帰路につく。 自転車をおしながら、どうしたものかと考えるが、何も良い案も出ず。 「それにしても頭にくるっ……店まで押し掛けるか普通」 (これでバイトがクビになったら無職だし、プーだし……ホームレス?ウソッ) 寒さの中、のたれ死ぬ姿を想像し、激しく首を横に振る。 「絶対ヤダッ、そんなの」 「何が嫌何ですか?」 聞き覚えのある声の主に、陽代は眉をひそめる。 「お仕事お疲れ様でした。まあまあ、そんな怖い顔をしないでください。別に"さっさとあるだけカネ出しやがれ"何てふざけたことは言いません」 軽く眼鏡を手で押し上げて微笑む。陽代にはまるで悪魔の笑みのように見えた。 「実はあなたにとっていい提案があるのです」 いつの間にか、暗闇が辺りを覆っている。随分と長い時間、ここにいたらしい。 「寒い…」 大きく身体を震わして、ハア、と両手に息を吐く。真っ白だ。 「仕方ないかぁ……」 紙を広げて呟く。その紙に記載されている内容は、"お手伝い募集"の文字。あの借金取りから渡されたもの。あの時、本当に殺されるーと覚悟した。生命保険で借金を払え!何てテレビのドラマのように脅されるかと思ったのに、肩すかしだった。 『知り合いのところで、丁度今、1人、働いてくれる人を探してましてね。それがあなたにぴったりなんです。まあ、住み込みできてほしいという条件ですが……どうでしょう』 あの悪魔の笑みで迫られ、顔をひきつらせながら「だって断われないでしょうが、どーせ」と言い放つ。そりゃそーだと後ろのヤンキー…若い借金取りが頷いている。 『では決定ですね。契約書に印を押しておいてください。ああ、シャチハタでも結構です』 では明日と、頭を下げて去っていく。
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