自分勝手、自分流

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自分勝手、自分流

景色と同じ真っ白なリアカーを引く錆切。 真四角で大きな箱に、タイヤと持ち手を付けたようなリアカーは、持つ者の気分によって、色を変化させる。 つまり、今は錆切の気分が真っ白なので、リアカーも真っ白だということだ。 リアカーという言葉から感じる、通常のイメージとは遠い、ハイテク機器なのだ。 夏銘はというと、リアカーの上で大の字に寝転びながら、炭酸飲料(Monster energy)を飲みながら、 「…………元気がありあまるぅー、ありあまってしまうー」、とつぶやいていた。 とても嬉しそうに。 とても美味しそうに。 だったら歩きやがれって話である。 まぁ、文句を言うつもりはない。 つっこみはするけども。 仕方ない、僕には彼女が必要なのだからそんなことくらい、気にしていてはいけない。 どちらかと言えば、いけない、というより、つまらない、って感じだ。 僕には彼女が必要なのだからそんなことくらい気にしていたらつまらない、だ。 どうせリアカーの重さは大して変わらない。 ならば道中はゆっくり休めばいい、その分仕事に力を入れてもらうとしよう。 大いに尽力していただこうじゃないか。 羽治羽に尽力してもらうという、僕らの仕事とは、一言で言えば、゙世界を僕らの作品にする″ことだ。 文字を書く小説は、本の中に世界をつくる、絵を描く絵画は、キャンバスの中に世界を作る。 僕らは、現実に世界を作る。 世界に世界を描く、何て言うと、かなり格好つけすぎだと思う。 僕らは世界に物語性を持たせる、世界を物語仕立てにすることが仕事だ、と言えば、理解してもらえるだろうか。 もう少しだけ言わせもらうなら、僕らの仕事とはミュージカルや舞台に近い。 観客こそを俳優と見做し創り上げる、一時の刺激を生み出すこと、そんな感じ。 気に入らない世界をちょっとだけ面白くできないかなぁ、と悩み、皆の日常を引っ掻き回し道化るのが、僕らの仕事、だと言っていい。 気に入らない日常にストーリーを。 つまらない日常をままならない物語へ。 まぁ、何となくわかっていただけただろうか。 最後に一言でまとめるならば。 僕らは好き勝手に世界を掻き混ぜながら生きているだけなのさ。
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