2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひゃあっ!?」
そんな素っ頓狂な声を、僕はあげていた。
もしも漢字に変換したら、『冷ゃあっ!?』になっていただろう。
何故なら、ばらまかれたのは実弾ではなく、水だったのだから。
どういうわけかはわからないが、全く、わからないのだが、どうやら、温情判決をいただけたらしい。
よかった、びしょびしょになった胸を、ほっと撫で下ろした。
普通に全身冷えてしまった。
自業自得だ、仕方ない。
むしろよくこれで済んだものだ。
正直、釘バットくらいは覚悟したが。
うん、実に何より。
ゾクゾクしたぜ。
あ、でも流石に、謝っておいた方がいいか。
勝手に覗き見、盗み聞きされていたとはいえ、酷いことを思っていたのは事実だ。
ここで謝らなければ、僕は本当に男ではなくなってしまうだろう。
あくまでも真摯に、何処までも紳士に、だ。
「ごめんなさい羽治羽さん。お詫びに食事でも、どう?」
羽治羽は今、仁王立ちのままそっぽを向いていたのだけれど、僕の言葉に首だけ振り返った。
「べ、べつに最初から、怒って、ないし」
ちょっと膨らんだ頬と睨む目が、僕にはまだ不満そうに見えたけれど。
次に、身体ごとこちらに向き直って、
「ふん、いいだろう。ごちそうされてやろう」
ニヤリと笑んで、そう言った。
ふぅ、遅くなってしまったけれど、ようやく食事ができる。
僕は一旦リヤカーを停めて、食事を用意する。
まぁ用意すると言っても、ボタン一つでほぼできてしまうのだけど。
最初のコメントを投稿しよう!