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妖がリビングをあとにした後、留樹達の間を、重い空気が流れた。
「私……ここに、住んでみようかな………」
泉の呟きに、留樹は瞳を大きく見開いて、叫ぶ様に言った。
「あなた、正気なの!? ここに、住むだなんて。信じらんない」
「だって、妖さんは優しそうだし、ここには私達を傷つける人は、いないみたいだし」
「だからって……!?」
怒りに顔を赤くして、自分を睨み見下ろしている、留樹を見上げながら泉は、言った。
「まぁな。ここには、傷つける者は、まずいいないだろうな」
拓哉は、ソファーの背に寄り掛かり、同意する様に呟いた。
「あの女が、嘘を吐いている様には、見えなかった。で? 留樹、答えは出てんだろ? 意地をはるなよ」
大輔は地図を、手に取り立ち上がった。
「~~~~~分かったわよ。地図をかして、大輔は方向音痴なんだから」
「どういう意味だよ! それは!」
留樹は不承不承の体で、同意して大輔の手から、半ば奪う様にして地図を、とった。
大輔は、ムッとして不機嫌をあらわに、留樹に詰め寄った。
「そのままの意味よ」
「地図があんだから、迷うはずないだろ!」
チラッと大輔を見て、素っ気なく言った。それに対して、大輔は留樹の手にある地図を、示して叫んだ。
『地図があっても、迷うでしょ(だろ)』
大輔は、三人に同時に言われて、その場に撃沈(げきちん)した。
「大輔ー。おいてくぞ!」
「リトルちゃんも、一緒に行こ」
「待てよー! おいてくな!」
留樹は、一人サッサとリビングの扉を開けて出て行き、その後をリトルを抱いた泉が続き、最後に拓哉が大輔に声をかけてリビングを後にした。
大輔は、それをみて慌てて、後を追った。
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