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二人は、人数分のお茶の準備が終わると、『何かありましたら、お呼び下さい』と言い残し、リビングを後にした。
妖は、留樹達の質問一つ一つに、丁寧に応えた。
「あの娘達は?」
拓哉は、マリアとサリアが、置いて行ったお茶を、飲んでいる妖に尋ねた。
「私とリトルの世話をしてくれるマリアとサリアよ。ちなみに、桜色のセミロングに紅い瞳の娘が、マリア。空色のセミロングに蒼い瞳の娘が、サリア、と言うの」
ティーカップをソーサーに、戻して拓哉の質問に、応えた。
「リトルと、言うのは?」
泉は、控え目に妖に尋ねた。
「私が、飼っている猫(ねこ)の事よ。あなたの足下にいる子が、そうよ。泉」
妖は泉の足下で、けづくろいを、している黒猫を示して、言った。
「え?」
泉が、足下を見ると、一匹の黒猫がいた。
「ミャー」
黒猫は、自分を見下ろす泉と一瞬視線が合うと、一声鳴き身を翻して、妖の元へ駆け足で向かった。
「ミャッミャ、ミャー」
「はい、はい。今上げるから、ちょっと待ってちょうだい」
妖は、甘えた声を出して、自分の足に擦り寄るリトルの頭を軽く、叩いて自分のソーサーに、ミルクを注いだ。
「リトル。お行儀良くね」
その言葉に、軽く跳躍(ちょうやく)してテーブルの上に、飛び乗りミルクを舐(な)める様にして、飲み始めた。
「ここに住んでいるのは、あんたとリトルとあのメイドだけか?」
大輔は、リトルに向けていた視線を、妖に向けて言った。
「半分当たりで、半分はずれ」
妖はティーカップに、2杯目のお茶を注ぎながら、言った。
「どういう意味だ」
拓哉は妖のからかいを含んだ態度に、表情を険しくして、睨み付けながら、言った。
「私の屋敷には、確かに私を含め四人が住んでいるわ。でもね、もう四人いるの。ここに住んでいる人が、男の子と女の子が二人ずつ」
新しく注いだお茶を一口飲んで、応えた。
「もしかして、私達の事だなんて、言わないわよね?」
留樹は、何かに気付いたらしく、表情を険しくして、1オクターブ低い声音で、言った。
「留樹は、頭がいいのね、そのとおりよ」
妖は感心したように、頷き言った。
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