【危険な出会い】

2/20
前へ
/267ページ
次へ
*** 「うひゃぁっ……!!」 午後九時の、大学終わりの帰宅途中。 珍しく豪雨となった今日、私は本日、五度目の悲鳴を上げた。 ちなみに、大学を出てからまだ十分ほどしか歩いていない。 にも関わらず、傘は骨が力なく震え、五度目の命の危険を訴えている。 「雨はいいけど……風は要らんでしょうがぁあっ!」 前方から吹き荒れてくる風と、殴り付けるような雨と戦いながら、後数分で到着予定のマンションを目指す。 メイクを施したそこそこの顔も、今は可愛さゼロを極めていて。 朝、時間を掛けて丁寧に巻いた長い茶色の髪も、今は空しく乱れたまま後方に流れている。 「でも自然に負けてたまるかぁあっ!」 鞄を頭に乗せたサラリーマンが、怪訝そうな顔ですれ違っていったけれど、とりあえず無視。 いや、見なかったことにしましょう。 ずんずんと足を進めて、やっとマンションが見えてきた。 緑豊かに見えるそれは、建ってからだいぶ経っていて、見るからに古い。 まぁ、家賃が安いから助かっているわけだけどね。  
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加