【危険な出会い】

3/20
前へ
/267ページ
次へ
そんな、いつもと変わらないマンションに近付くにつれ、唯一の変化が見えてきた。 マンション前にある階段の横。 人目を避けるように、何か物体が置かれている。 豪雨が視界を霞ませていて、物体ということ以外分からない。 けれど。 物体まで後数歩というところで、足は自然と止まった。 「人……?」 階段にもたれ掛かるように座っていたのは、紛れもない人間。 濡れた髪が顔を隠してしまっていて、表情は確認出来ない。 けれど、それが男であることは分かった。 襟足が長い黒髪に、しっかりとした体付き。 見た感じだと、二十歳ぐらい? でも……こんな状況で何してるのかしら。 「あのー……どうかなさったんですか?」 とりあえず男の人も傘に入れて、尋ねてみる。 が。 返事なし。 それどころか、微動だにしない。 まさかっ……死体!? 慌ててしゃがみこみ、息を確かめてみると、微かな呼吸が聞こえてきた。  
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加