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そんな、いつもと変わらないマンションに近付くにつれ、唯一の変化が見えてきた。
マンション前にある階段の横。
人目を避けるように、何か物体が置かれている。
豪雨が視界を霞ませていて、物体ということ以外分からない。
けれど。
物体まで後数歩というところで、足は自然と止まった。
「人……?」
階段にもたれ掛かるように座っていたのは、紛れもない人間。
濡れた髪が顔を隠してしまっていて、表情は確認出来ない。
けれど、それが男であることは分かった。
襟足が長い黒髪に、しっかりとした体付き。
見た感じだと、二十歳ぐらい?
でも……こんな状況で何してるのかしら。
「あのー……どうかなさったんですか?」
とりあえず男の人も傘に入れて、尋ねてみる。
が。
返事なし。
それどころか、微動だにしない。
まさかっ……死体!?
慌ててしゃがみこみ、息を確かめてみると、微かな呼吸が聞こえてきた。
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