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……良かった。死体ではないらしい。
安堵したのも束の間、やっぱり、何をしてるのか、という疑問が再び膨らむ。
というか、微かな呼吸って。
「あの、どこか具合でも悪いんですか? 救急車呼びましょうか…?」
声を掛けながら肩を揺さぶってみる。
すると、彼は私の方へと倒れ込んできた。
衣服に水が浸透していくのを感じ、思わず身震いする。
「あ、あのっ――」
彼を押し退けようと、体に手を付いた瞬間。
水とは違う何かに、手が滑りかけたことに気付いた。
おそるおそる、手のひらを見てみれば、その手が真っ赤に染まっているのを目にせざるを得ない。
「救急車っ……!!」
慌てて鞄から携帯を取り出そうとしたけれど。
その手は突然、目の前で必死に深い呼吸を繰り返し始めた彼によって掴まれてしまった。
「部屋……連れていけっ……」
苦しそうな吐息の中に混じる、色気のある低い声。
不謹慎だけれど、思わず心臓が跳ね上がってしまった。
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