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……というか。今、さらっと凄いこと言わなかった?
部屋に連れていけ?
瞬間的に体から熱が引いていき、呆気なく心臓は落ち着きを取り戻す。
「あの……失礼ですが、今何と――」
「部屋っ……連れてけって、言った、んだよ」
切れ長の澄んだ青い瞳が、間近で私の心を捉えた。
濡れた前髪から覗くそれは、吐息に混じる声と同様に、色気があって魅力的すぎる。
思わず頷きそうになったけれど、慌てて頭を横に振った。
「ダメダメッ……! 初対面の、しかも男の人を、簡単に部屋に連れていけるわけないじゃないですかっ……!」
彼が怪我していることは、とりあえず横に置いておいた場合の話だけれど。
いや、置いておかなくても、さっさと病院に行った方が賢明なのは、誰の目から見ても明らかなこと。
負傷している部位は、暗くて定かではないけれど、ただ事ではない血が流れているのは何となく分かる。
「とりあえず病院に――」
「連れてけって言ってんの…っ…」
瞬間。
男が、抱きつくように体を密着させてきた。
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