【危険な出会い】

5/20
前へ
/267ページ
次へ
……というか。今、さらっと凄いこと言わなかった? 部屋に連れていけ? 瞬間的に体から熱が引いていき、呆気なく心臓は落ち着きを取り戻す。 「あの……失礼ですが、今何と――」 「部屋っ……連れてけって、言った、んだよ」 切れ長の澄んだ青い瞳が、間近で私の心を捉えた。 濡れた前髪から覗くそれは、吐息に混じる声と同様に、色気があって魅力的すぎる。 思わず頷きそうになったけれど、慌てて頭を横に振った。 「ダメダメッ……! 初対面の、しかも男の人を、簡単に部屋に連れていけるわけないじゃないですかっ……!」 彼が怪我していることは、とりあえず横に置いておいた場合の話だけれど。 いや、置いておかなくても、さっさと病院に行った方が賢明なのは、誰の目から見ても明らかなこと。 負傷している部位は、暗くて定かではないけれど、ただ事ではない血が流れているのは何となく分かる。 「とりあえず病院に――」 「連れてけって言ってんの…っ…」 瞬間。 男が、抱きつくように体を密着させてきた。  
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加