🆕LESSON1:音楽と日常とあったかい手と

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*** 部活終了後。 今日の部活もなかなかハードだった。 一年の総まとめの期間というのもあり、基礎固めの練習をみっちりやって新入生歓迎会コンサートの練習もあった。 黒猫街のプレイヤーとしてステージに立ちたかった俺は、毎日サックスの練習ができるからという軽い気持ちで吹奏楽部に入部したが、ここまでガチな部活だとは思ったなかったのだ。 コンクールメンバーはエントリー制とはいえ、同時進行で演奏会や運動部の応援もあるので暇な期間というものがないのだ。 俺の通う千國院学園は文武両道なので、学業との両立もまた中々大変というのもある。 色んな部活が全国大会に出場しているし、大学進学だけでなく留学する人が多い。短期留学制度もあるし留学生も受け入れている。 まあ、そんなこんなで勉強だけじゃなく部活も積極的に打ち込む生徒も多いのだ。 まあ勿論全員がそうなわけではない。 私立だから色んな生徒がいるのは当然のことだ。 …個性を生かすのが私立のいいところでもある。 前置きはその辺にして、俺の親友の赤坂日速は結構ヤバいのだ。 校則違反の塊、遅刻大王、生徒会ブラックリストに載ってる…とか色々噂されている。 不良、とまではいかないと思う、多分。 でも日速はいいやつだと思う、付き合っていくなかで見えてくる良さがある。 俺のことをよく見てくれているからさりげない気遣いができるし、音楽や服装などのセンスもいい。 バイトで遅くなったときバイクで迎えに来てくれるし、買い物とかにもよく一緒に行くし、泊りにも来るし…。 日速は校則ブレイカーとはいえども、人間的にアウトというわけじゃない。部活やバンドに関しては真剣だし、常識はあると思う。 勉強だってポテンシャルは十分すぎるぐらいでぎりぎりに本気出してやって単位は全部とれている。やればできるのにタイプなのだ、俺の親友は。 今夜も来てくれるのだろうか。 なにも言わなくてもバイトの日は迎えに来てくれることが多い、それに俺も甘えてしまっている。 悪いなと思いつつもバイト後、店のドアを開けた先に日速がいると心があったかくなるのだ。 *** 部員に挨拶して部室を施錠する。 鍵の管理は俺と海藤先輩の仕事なのだ、今日は俺が当番だった。 窓の外を見るともう暗くなり始めていた。 夕焼けがだんだんと夜へフェードアウトしているくらいの空、空色からオレンジへ茜色へ紫へ…そして夜の色へ。 マジックアワーと呼ばれる時間帯の空は大好きだった。 もともと夕焼けが好きで、とっておきの夕焼けが見える「秘密の場所」なんてポエミーなものを持っているくらいには、俺は夕焼けが好きだった。
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